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書評 玄武岩 『デジタル・デモクラシー』 

韓国のデジタル・デモクラシー
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玄 武岩


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 本書の主旨を一言で表現するならば、「権力と言論との関係」を主軸に据えた現代韓国の政治史であると言えるだろう。いかにして韓国の人々が大手新聞社と既存権力との癒着(「権言癒着」)を、インターネットを用いて乗り越えていったかが、明晰な筆致で綴られている。

 よって、同時に現代韓国の政治史の入門書としても優れた内容である。朝鮮日報を中心としたメディアが、日本統治時代から軍事政権時代を通じて権力の番犬として育成され、曲解と煽動に満ちた恣意的な報道を行ってきたその過程は、そのまま戦後の韓国が経てきた国内政治における苦難をそのままなぞっていると言える。このことは、いかに権力と言論とが、その本質において密接な関連性があるかを象徴しているようで興味深い。また、これらの過程を考慮すると、現在焦点となっている「親日」問題に関しても、今までとは少し違った角度から見ることができるだろう。
 そういった腐敗した「権言癒着」の構造があったからこそ、人々はインターネットという未知なる大海に、自由を求めて漕ぎ出していったのだと言えるだろう。そして、実際にそこで新たな反権力の足場となるような公共圏を確立したのだった。まさに、「我々が行くところに我らのポリスあり」という古代ギリシアの人々の行動をなぞるかのように。本書はそういった韓国のインターネット社会が、盧武鉉氏という媒体を得ることによってメディアを民主化していく闘争の過程を生き生きと、そして同時に生々しく描き出すことに成功していると言えよう。

 特に圧巻なのは韓国におけるインターネット言論の構造をリアルタイムで解析した第5章(「オンライン・デモクラシー」)であろう。幾つかの大手サイトや、コテハンを取り上げ、時系列を追ってそれらのアクターたちが成した発言を紹介し、その与えた影響を分析している。こうした形でインターネット上の無名の人々によるリアルタイムでの議論の生成過程を追い、なおかつ一つの文脈において総合するということは、わが国のネット上では頻繁に「まとめサイト」(ある事象についてのネット上における情報を収集・整理したリンク集)などの形をとり、草の根のネットユーザーたちにより自発的に行われてきたことであるが、アカデミックな研究としては、あまりなされていないというのが現状ではないだろうか。そういった意味で、この章における分析は非常に価値があるものと考えられる。

 しかし、一方で幾つかの問題を抱えた著作であることも確かだ。まず、致命的なのは終章(「インターネットは権力か」)における構造や論旨の乱れであろう。この章は韓国の現状、ならびに日本におけるデモクラシーや言論の問題などを取り上げていて、幾つか非常に秀逸な論点や指摘があり、それは評価されるべきであろう。しかしながら、様々な論点を詰め込みすぎて、結果的に少し消化不良な印象を受ける。

 例えば少ない紙数において日韓の政治構造の比較や本来デリケートな問題である歴史問題に関して触れたことで、結果として議論が少し粗雑になってしまったのではないだろうかと筆者は個人的に感じる。ただし、着眼点そのものには非常に秀逸なものがあるので、著者が今後、改めて別の機会に腰を据えて展開してくれることを期待したい。また、付け加えるならばここで僅かに触れられている韓国におけるインターネット実名制に関しても、もう少し立ち入った紹介や記述が欲しかったと筆者は感じた。

 もっとも、総合的にみれば本書が非常な良書であることは確かだ。過去や現在の日韓関係がどうあれ、いまの韓国社会、ならびにその政治文化にはわれわれにとって範例となるべき新たな潮流が生まれつつあるのは否定できないのではないだろうか。特に『JanJan』にアクセスしているような読者には、非常に有意義な視座が幾つも盛り込まれた著作であるといえよう。自信を持ってお勧めしたい一冊である。

 ただし、付け加えるならば本書における「デジタル・デモクラシー」は公共的な言論に焦点を当てたものであるため、行政学的な政策・制度論的観点に立脚した議論を期待する読者にはお勧めできない。

 この記事はこちらより転載したものです。
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コメント

それにしても、寝太郎さんの文章はよく解説されていて、わかりやすいです。
将来、学者になるのですか?

う~ん…

>はんなさん

 お褒めにお預かり光栄です。僕自身は、本質的には自分の文章は回りくどくてわかりにくいと思っているので、できるだけ簡潔で一貫した文章になるように強く意識しています。

 学者は…なりたかったのですが、才能と性格的適性の欠如を最近自覚し、したがって現在就職活動にいそしんでいるところです。

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「韓国のデジタル・デモクラシー」は選挙期間中に読むのをオススメ!

堀江さんの立候補によって選挙とネットの関係があれこれ議論されている今こそ読んでおきたいこの一冊。韓国のデジタル・デモクラシーこの本の中に出てくる韓国の状況が、ここ数年のうちに日本にも波及してくるのだろうか。日本のネット特性を考えると、そうな....
  • [2005/08/28 11:31]
  • URL |
  • ウェブリテラシー研究所 web-literacy lab |
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